医院ブログ

よく噛むことって本当に体にいいの?!

わたしの通っていた小学校では給食の時間になると、
「よく噛んで食べましょう!」
とか、
「ひと口30回噛みましょう!」
などと注意がうながされていました。そのため、なんとなく「食事はよく噛んで食べた方がいいんだ」と頭の中にインプットされていましたが、実際、よく噛むことはそんなに大切なのでしょうか。千種区在住の方も含め、現代人の噛む回数と健康の関係について少し考えてみましょう。

ご存じかもしれませんが、食事をしてから脳の満腹中枢に指令が行くまでには、少し時間がかかります。
そのため、あまり噛まずに早食いをしていると、脳に指令がいく前にたくさんの量を食べてしまい、結果として肥満につながるのです。
逆説的な話ですが、肥満の方の中に、歯が悪い方が多いのも事実です。
歯が痛んだり、歯がなかったりするため、しっかり噛めずに飲み込むことが習慣になってしまい、肥満になってしまうのです。

よく噛むと、唾液が多く出ますが、この唾液が健康な体作りにつながります。
なぜなら、唾液の成分は、口やのどの粘膜が傷つかないように保護してくれますし、殺菌力があるので、口の衛生に役立つのです。さらに、唾液の成分の中には発がん性物質を分解する酵素が含まれていると言われています。
よく噛んで、食べ物を唾液と混ぜ合わせるなら、できるだけ多くの発がん性物質が飲み込む前に分解でき、体に取り込まずに済むのです。

食べ物をかむこと自体も、歯と歯茎の健康に欠かせません。
物を噛むことで、歯と歯茎は食べ物によってこすられます。それが自然なマッサージ効果をもたらし、口の中がきれいになり、虫歯や歯周病になるリスクが下がるのです。

現代人の噛む回数は、卑弥呼の6分の1ほどだと言われています。
卑弥呼が生きた弥生時代には、一回の食事で平均3990回だった咀嚼回数が、今では620回にまで低下しているようです。
主な原因は、弥生時代の食事が玄米や乾燥した木の実に干し魚といった、噛みごたえのある硬い食物が中心だったのに対し、現代人の食事はあまり噛まずに飲み込める、軟らかいものに変化していることにあるようです。
確かに、レストランで出される食事の多くは、ハンバーグ、スパゲッティ、オムライスなどのように軟らかいものが中心になってきていますね。

このように現代人の食生活は、歯科の観点からすると、心配な点がたくさんあります。
歯科医院に虫歯や歯周病の治療に来られる方に、まずお勧めしたいのは、おいしい食事をよく噛んで味わって、歯医者さんいらずの健康な生活を送ることです。

人の歯はどうしてこんなに硬いのか

1日に三度、食事のたびに使われるのが「歯」です。1日に噛む回数はトータルで500回程度。グッと噛みしめると歯には30kg〜50kgの力がかかります。
こんなに使用頻度が高いのに、わたしたちはどうして生涯にわたって物をかみ続けられるのでしょうか。それは、歯がとても丈夫にできているからに他なりません。

物の硬さを測る単位に「モース硬度」というものがあります。これは、ひっかいたときの傷の付きにくさを表すものですが、ダイヤモンドのモース硬度は10、人の歯はモース硬度7です。
つまり、人の歯は宝石でいうと水晶と同じくらいの硬さになります。
硬いものと聞いて思い浮かぶのが「鉄」ですが、実は鉄はモース硬度が4であることを考えると、歯がいかに硬くて傷つきにくいかがよくわかります。

では、なぜ人の歯はこんなにも硬いのでしょうか。
その秘密は歯の表面を覆っている「エナメル質」と呼ばれる部分にあります。実はこの「エナメル質」は、人体の中で一番硬い組織と言われているのです。
この「エナメル質」の内側には「象牙質」と呼ばれる部分があり、そのさらに内側に「歯髄」と呼ばれる柔らかい組織があります。この「歯髄」の中に、神経や血管が通っているのですが、大事な「歯髄」は表面の硬い「エナメル質」によってしっかり保護されているのです。

こんなにも硬くて丈夫な歯ですから、以前は歯を削るのも至難の業でした。しかし50年ほど前に、「エアタービン」と呼ばれる歯を削る機械が開発されました。おかげでより効率よく、正確に歯を削れるようになりました。
歯科医院に行くと、よく「キーン」という高い音が聞こえてきますが、この音が実はエアタービンの音なのです。ちなみに、このエアタービンの先端には歯より硬いダイヤモンドの粉末が付けられています。

もちろん、私の医院で使っているのも、この機械です。歯科医療の技術の向上に伴い、患者さんへの負担が軽い、よりよい治療を行えるようになったのは喜ばしいことですね。
もちろん、歯科医にとって患者さんが日ごろから歯のケアをしっかり行い、虫歯の治療を必要としないのに越したことはありません。しかし、歯科治療が必要とされる以上は、医療の技術と質の向上を目指すしかありません。
これからもよりよい治療を提供していきます。

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